- こんなあなたに
- 庭にシンボルツリーを植えようとしている人
- 木々が元気に育つ方法を知りたい人
- 雑木の庭をDIYしたい人
- 困りごと
- シンボルツリーを1本だけ植え大丈夫?
- シンボルツリー1本では見栄えもショボイんだけど?
- 雑木を健康に育てるにはどうすればいいの?
その名のとおり自宅のシンボルにふさわしい木を選びたい。でもどんな木がいいのか。虫がつかない木がいいな。手間のかからない木がいいな。シンボルだけに失敗はしたくない。シンボルツリーを選ぼうとするする人によくある悩み事だと思います。
シンボルとはすなわち象徴。象徴と聞くと「いろんな樹種から象徴にふさわしい1本を厳選する」みたいな感覚になりませんか。でも本当にそうでしょうか。
この記事では、シンボルツリーを選ぼうとしている人に知って欲しい健康な雑木の庭をつくる秘訣「高木」「中高木」「中木」「中低木」の組み合わせをまとめました。
雑木の庭DIY歴10年以上のらずもねは、「厳選の1本」のような感覚でシンボルツリーを選んだのではなく、いろんな樹種を組み合わせて雑木の庭をつくり、10年以上、健康な庭を維持しています。
シンボルツリー選びで悩んでいる方にご覧いただければ、「どれか1本にしなきゃ」という思い込みから幅を持ったゆったりとした考えになれると思います。
もくじ
- 健康な雑木の庭を作る秘訣
- 高木、中高木、中木、中低木とは
- 高木、中高木、中木、中低木の役割
- 高木、中高木、中木、中低木の役割
- 自然林に見る高木、中高木、中木、中低木
- 高木・低木の組み合わせではなくシンボルツリー1本だと
- 枯れる心配
- 生長(樹高)のコントロール
- らずもね家の高木・中高木
- コナラ(落葉高木)
- ヒメシャラ(落葉高木)
- アカシデ(落葉高木)
- らずもね家の中木・中低木
- ミツバツツジ(落葉低木)
- クロモジ(落葉低木)
- 秋のアカシデで実感した落葉高木と常緑低木の役割
- 健康な雑木の庭を作る秘訣をさらに詳しく知るには
- 本日のらずもねフィーリング
健康な雑木の庭を作る秘訣
「高木」「中高木」「中木」「中低木」を効果的に組み合わせる。これが健康な雑木の庭を作る秘訣です。
この秘訣は庭全体にたくさんの雑木を植えたい人に役立ちます。
そして、シンボルツリーを選びたい人にも役立ちます。なぜなら、高木、中高木、中木、中低木の組み合わせが、株元に適度な日陰と湿潤をもたらし木々の健康を維持しながらも、さらに、1本だけのシンボルツリーを大きく育てるよりも剪定でサイズをコントロールしやすいからです。
高木、中高木、中木、中低木とは
雑木の庭をつくりたい。シンボルツリーを選びたい。どちらにしても、知っておきたい高木、中高木、中木、中低木について確認しましょう。
高木、中高木、中木、中低木とは木々(成木)の樹高による分類です(苗木,幼木の樹高ではなく成木の樹高による分類です)。雑木は一般的に成木の樹高によって高木、中高木、中木、中低木に次のように分類されます。
- 高木 :8.0~5.0m程度
- 中高木:4.5~3.5m程度
- 中木 :3.5~2.0m程度
- 中低木:2.0~0.5m程度
雑木の庭を造りたいならコレを読め,146頁引用
高木、中高木、中木、中低木の役割
健康な庭づくりには高木、中高木、中木、中低木の組み合わせが大切です。
なぜなら、木々がもつ性質にあわせ、直射日光に強い高木群、地表温度の上昇を抑える中低木群が互いを補うように作用して健康な庭を長く維持してくれるからです。
高木、中高木、中木、中低木の役割
高木、中高木、中木、中低木の役割をかんたんにまとめます。
- 高木・中高木の役割
- 立体的・階層的に構成される雑木群の中で最も高く枝葉を伸ばし直射日光を遮る。
- 中木の役割
- 高木の幹に横から差し込む直射日光を遮る。
- 中低木の役割
- 地表温度の上昇を抑制する。
自然林に見る高木、中高木、中木、中低木
雑木の庭は、自然林の美しさを私たち人間の手で庭に再現しようとするものです。ここで、自然林の中での高木、中高木、中木、中低木をかんたんに見ておきましょう。
上写真は仙台が誇る秋保温泉にある「磊々峡(らいらいきょう)」の様子です(2018年10月25日撮影)。
磊々峡のように、里山に深く入らずとも私たちの身近には美しい自然林があります。日光を乱反射させる葉の輝き。風に揺れた葉が擦れる音の心地よさ。幹肌が見せる冷涼感。これらが幾重にも重なり脳内には最大級のアルファ波が到来。森林浴の気持ちよさは雑木群がつくりだしています。
さて,上写真を高木、中高木、中木、中低木に着目して見ると、見切れてしまう程の高木から,手を伸ばせば葉に触れられそうな中木,目の高さより下にある低木等,さまざまな樹高の木々が見えますよね。地表面にしっかり日陰が落ちているのも大切なポイントです。雑木林はこの立体的・階層的な木々の組み合わせによって健康に育つといいます。
この自然樹林が健康に育つ条件を雑木の庭で再現したい。シンボルツリーを選びたい。私たちが身近な場所に木々を植えたくなる時、庭をつくる時に期待することは、美観はもちろんのこと、木々から元気をもらって豊かで健康な生活を送ることではないでしょうか。だとすれば、木々が健康に育つことが絶対条件。だから、直射日光への耐性のように高木、中高木、中木、中低木がもつ性質を理解して選定・レイアウトすることがとても大切です。
高木・低木の組み合わせではなくシンボルツリー1本だと
庭に1本だけシンボルツリーを植えるのもいいと思います。ポツンと1軒家ならぬ、ポツンと1本だけ。庭のつくり、樹種選びは、どこまでいっても好き嫌いが決めることです。ので木を1本だけ植えたい人に「けしからん」と言うことはありません。
ただ、おすすめはしません。その理由は次のおりです。
枯れる心配
木々を組み合わせる場合に比べて枯らしてしまう可能性が高いです。あなたが選んだ1本に直射日光の耐性があれば、枯れる心配はそれほどないかもしれません。しかし、直射日光の耐性のない樹種を選んでしまうと枯れる心配があります。近年の猛暑は強烈です。直射日光のみならず、コンクリート、アスファルトによる輻射熱も木々のストレスになります。
その点、高木、中高木、中木、中低木の役割を理解して複数の樹種を組み合わせると、互いを補うように作用して健康に育つ可能性が高まります。
生長(樹高)のコントロール
木を植える位置が強い直射日光のあたる場所だったとします。となると、その位置に適するのは高木ということになります。生長が早い高木は大きくなり過ぎる心配がありますが、高中木、中木などと組み合わせることで生長のスピードを遅らせることができます。
生長のスピードは、葉の量に関係します。葉が多いとそれだけ光合成が進み生長スピードが速まります。逆を言えば、剪定して葉の量を減らせば(木々にはかわいそうですが)生長を遅らせることができます。
また、高木、高中木、中木同士の枝の重なりが、葉と株元に影をつくります。こうして直射日光を抑えると生長スピードを遅らせることができます。
高木1本だけではコントロールの余地が少なく、大きくなり過ぎた後、堪らず伐採してしまうということも起こると思います。が、複数の樹種を組み合わせることで、その心配を減らせると思います。
らずもね家の高木・中高木
ここからは,らずもね家の高木、中高木、中木、中低木を紹介します。
コナラ(落葉高木)
コナラの幹には生長と共に刻まれるひび割れがあります。苗木・幼木にはない生長の証「ひび割れ」が醸す雰囲気は,雑木の王様「コナラ」だけがまとうもの。雑木林を強く想起させる「コナラ(高木)」は,庭の骨格をつくるのに相応しい存在です。
ちなみに,上写真でコナラの幹の背景になっているのは「ジューンベリー(落葉中高木)」。夏の強烈な日差しをガブガブと食べるかの如く生長するジューンベリーは,見事にコナラの幹に降り注ぐ直射日光を緩和してくれます。
ヒメシャラ(落葉高木)
上写真は「コナラ(落葉高木)」「ヒメシャラ(落葉高木)」の樹冠部分です。
アカシデ(落葉高木)
コナラに次ぐらずもね家の主役が「アカシデ(落葉高木)」です。植栽した当時,主(あるじ)の手によって更地にポツンと植えられてしまい夏の容赦ない直射日光のせいで葉を大量に落としてしまいました。その後,登場した救世主「シャリンバイ(常緑低木)」がアカシデ自身の南側に植えられことによって,株元の地表温度が抑えられ,乾燥しなくなったことによって勢いを取り戻しました。
らずもね家の中木・中低木
ミツバツツジ(落葉低木)
上に書いたとおり各階層で「直射日光を遮る」点に着目すると,中木・中低木は地面近くに広げる枝はによって地表温度の上昇を抑える役割があります。こうして,見た目の美しさとともに「涼しい庭」になるのが嬉しいんですよね。
さらにもう一つ。中木・中低木は,樹高が私たちの目線か眼下に位置するため「花や実の美しさ」を鑑賞するには打って付けの存在です。
淡いピンク。淡い紫。
2019年4月23日。ミツバツツジ(落葉低木)が美しい花を咲かせると,庭の彩は一気にグラマラスになります。木々の緑を背景に一輪一輪が浮き出すように映える紫の花。花後は,夏に備えて葉を広げ地表温度の上昇を抑える役割に徹する大車輪の活躍。
クロモジ(落葉低木)
ミツバツツジと同じように,目の高さにあるクロモジの葉の美しさもたまらない。
春雨の後,太陽に照らされる水滴の瑞々しさ。夏にかけて深みを増す前の黄緑色の葉。その柔らかさに宿る癒しのパワー。
その背の高さから,私たちの視野に入りやすい中木・低中木には,見る者を楽しませ・癒してくれるのも魅力だと思います。
秋のアカシデで実感した落葉高木と常緑低木の役割
らずもねの「雑木の庭DIY」着手は2014年。この年に植えたアカシデ(落葉高木)は,夏の終わりに葉がチリチリ枯れてしまいました。時期的にも,枯れ葉の状態からも,紅葉とは違う樹勢の衰えを心配したものです。
当時,更地にポツんと植えたアカシデには,幹にも株元にも容赦なく直射日光があたり,ひどく乾燥が進む過酷な状態。真夏に蓄積されたダメージが大きかったんだと思います。
その反省から,2015年,アカシデの株本に日陰をつくるようシャリンバイ(常緑低木)を植えました。
すると,2017年秋のアカシデの様子は違いました(上写真)。残暑の9月に落ちる葉は少なく,10月でもタップリ葉を抱いて紅葉をまっています。
背は低いながらも他の株元に日陰をつくる低木群。低木群を覆うように背を伸ばし適度な日陰をつくる高木群。それぞれが役割を全うし互いに支え合うことで「雑木の庭」が健康に育ちます。
健康な雑木の庭を作る秘訣をさらに詳しく知るには
健康な雑木の庭をつくる秘訣をさらに詳しく知りたい人には雑木の庭を造りたいならコレを読めで繰り返し紹介している個人的名著「これからの雑木の庭-庭空間を改善して快適に」を読むのが手っ取り早いです。ぜひご覧ください。
雑木の庭を造りたいならコレを読め(厳選の1冊)
本日のらずもねフィーリング
- 健康な雑木の庭を作る。その秘訣は,ズバリ高木から中低木にかけてそれぞれの「日当たりの適正(直射日光への耐性)」に応じて植栽することです。
- 「直射日光への耐性」を知り,木々同士が互いに支え合える立体的・階層的に植栽することで健康な庭が育ちます。
- 立体的・階層的な植栽とは対照的に「やっちゃいそう」なのが,「シンボルツリーをポツンと植える」植栽ではないでしょうか。らずもね家のアカシデが激しく葉を落とした経験からも,木1本をポツンと植えるのはよくありませんね。
- さまざま組み合わせから理想を実現するのは楽しいものです。雑木の庭に使える樹種、シンボルツリーを選びたい方は、落葉樹、常緑樹、下草をまとめた次の記事もぜひご覧ください。